日本のギャンブル界で名を馳せた柏木昭男。彼がどのようにしてホエールと称されるようになったのか、そしてその人生の最後がどうなったのか。興味深いエピソードを追ってみましょう。
私が柏木昭男氏の存在を知ったのは、初めて英語のウェブサイトでその名前を目にした時でした。ギャンブル界の伝説的な人物について調査していたときに、彼の名前が飛び込んできたのです。
「本当に、日本人でもこんなに有名なカジノの大金持ちがいるのか？」と驚きながら、さらに調査を進めると、柏木氏が何者かによって自宅で殺されていたことが明らかになりました。この事実に興味を持ち、さらに詳しく調べることにしました。
何故か柏木氏に関する多くの記事で、俳優の市川勇氏の写真が使用されています。この謎も、後ほど解明します。
ギャンブル界の異端児、柏木昭男
柏木昭男氏は、1937年に山梨県富士吉田市で生まれました。彼は貧しい家庭環境から這い上がり、不動産業で成功を収めました。その後、貸金業にも進出し、柏木商事を設立しました。さらに、富士スバルラインの建設でさらなる富を築き上げ、地元では「山梨の不動産王」として知られるようになりました。
しかし、彼の成功には陰がありました。彼は強引な手法で地上げを行い、何度も警察の注意を引いていました。その結果、地元では評判がよくありませんでした。それでも、柏木氏はその富をギャンブルに注ぎ込むことにしました。
彼が世界的な名声を得たのは、1990年のバブル期でした。オーストラリアのダーウィンでの4日間の滞在中に、バカラで約290億円を勝ち取り、「ウォーリアー」という異名を得ました。
柏木氏の名はロバート・デ・ニーロ主演の映画「CASINO」にも登場し、日本人キャラクターとして描かれました。このことからも、いかに彼の知名度があったかが分かります。
そして、市川勇氏の写真が誤って使われている件ですが、それは最初にその記事を書いた英語のライターが市川氏の写真を誤って掲載したため、その後もその写真が使われ続けたと考えられます。
ちなみに、市川勇氏と柏木昭男氏には何の関係もありません。市川氏は健在であり、柏木氏が殺された事件とは無関係です。
柏木昭男とドナルド・トランプ：ギャンブルの王と未来の大統領の邂逅
柏木昭男氏は、毎月海外のカジノで遊び、その全ての費用はカジノが負担していました。渡航費、宿泊代、食事代など全てです。オーストラリアでの２９億円の大勝利からわずか一ヶ月後、ドナルド・トランプ氏がマイク・タイソンとジェームス・ダグラスの試合を観戦するために来日している最中に、二人は出会うことになりました。
当時、トランプ氏はアメリカの不動産界で名を馳せ、アトランティック・シティにも自身のカジノを所有していました。トランプ氏は柏木氏の評判を耳にし、彼を自身のカジノに招待することにしました。1990年2月、プライベートジェットで迎えられた柏木氏は、トランプ・カジノでバカラに興じました。
トランプ氏は、柏木氏を「美味しいカモ」と見ていたことでしょう。しかし、柏木氏はトランプ・カジノで9億円以上も勝利し、カジノに始まって以来の大きな損害を与えました。怒ったトランプ氏は、三ヶ月後に再度柏木氏を招待します。
最初は順調に見えた柏木氏でしたが、最終的には約12億円の損失を出してしまいます。翌日には、この出来事が「ウォールストリート・ジャーナル」に「世界で最も派手なギャンブラー」というタイトルで掲載され、柏木氏の名はさらに広まりました。
柏木昭男氏の謎の死とトランプ氏の関与の噂
1992年1月3日、当時54歳の柏木氏は自宅で惨殺されました。その後、トランプ氏が関与しているのではないかという噂が広まりました。しかし、トランプ氏が関与したとする証拠は見つかりませんでした。その結果、多くの疑問が残りました。
柏木氏は、英語が話せないにも関わらず、ジェスチャーで意思を伝えていました。また、負けると性格が一変し、怒りを周囲にぶつけることもあったと言われています。
真相は闇に葬られた
事件現場には特定の長靴の足跡があり、家の裏口の鍵だけが解錠されていました。さらに、大月市の河川敷で柏木氏のアタッシェケースが空の状態で見つかりましたが、凶器や他の決定的な証拠は見つかりませんでした。一部の説では、アタッシェケース内の文書を消去したかった犯人がいたとも言われていますが、その中身は柏木氏だけが知っていたと言われています。
家には荒らされた痕跡はなく、柏木氏が多数の刺し傷を負っていたことから、犯人は柏木氏に対して強い恨みを抱いていた可能性が高いと考えられます。
事件から1カ月後、車の取引でトラブルを起こしていた暴力団員とその知人である看護師が逮捕されましたが、二人とも柏木氏の殺害には関与していないと主張し続けました。当初は解決の糸口が見えたかと思われましたが、94年12月に甲府地検は「証拠が不足している」として二人を不起訴としました。この判断には、国粋会系の暴力団と山梨県警との間に何らかの密約があったとの噂も広まっています。
そして、この事件は2007年に時効が成立し、真実は闇に包まれたままとなっています。
これは推測になりますが、かつて土地かお金を騙し取られた人物が、長い間復讐の機会を伺っていた可能性もあります。いずれにせよ、柏木昭男氏のような運命を避けるためには、常に誠実であることが重要です。ギャンブルも借金で行わないよう心がけましょう。
